2月に打ち上げが中止・延期されていた先進光学衛星「だいち3号」(ALOS-3)を載せたH3ロケット試験機1号の打ち上げが3月7日に行われました。
しかし、結果としては打ち上げは失敗に終わり、指令破壊信号が送信されました。
前回の会見で岡田匡史プロジェクトマネージャー(以下、岡田PM)は涙を見せながら中止・延期についてコメントされていました。
一方、今回は「打ち上げ中止」ではなく「打ち上げ失敗」となり、岡田PMはどのような見解を述べられたのか。
今回の打ち上げの内容も合わせて見ていきましょう。


H3ロケットの打ち上げ・フライトシーケンス
発射480秒前からカウントダウンが始まる。
発射240秒前から自動的にバルブ開閉やモード切替する段階に入る。この段階が人によるスイッチ操作の最終段階。
発射18秒前にフライトモードがオンとなる。
発射15秒前に全ての準備が完了段階となる。
発射6.3秒前にエンジンをスタートさせる。LE-9とは液体エンジンのことで、立ち上がるまでに約5秒ほどかけて安定化させる。2月17日の打ち上げ中止の際は、この立ち上げ時に異常が検知された。
発射0.4秒前にSRB-3に点火される。
発射。
発射から1分56秒後にSRB-3が分離。
発射から3分34秒後にフェアリングを分離。
発射から5分5秒後に第1段・第2段が分離。
発射から5分17秒後に第2段エンジン燃焼を開始。
発射から16分43秒後に地球観測衛星である「だいち3号」(ALOS-3)を分離する。
なぜ打ち上げが失敗となったのか
上記のSTEP11の「第2段エンジン燃焼」の段階で燃焼が確認されず、ミッション達成の見込みがなくなったため、指令破壊信号が送信されました。

第2段エンジン燃焼が開始されなかった原因は、失敗直後では明らかにすることはできないとのことで、詳細は今後分析されるそうです。
岡田匡史プロジェクトマネージャーの見解

・このような結果となってしまい申し訳なく思っている。
・子どもや学生のたくさんの期待が乗っていたことについて、その話題については弱い。考えるほどの余裕のない状態。早く原因を究明してH3ロケットの飛び立つ姿を見てもらいたい。
・現時点の原因については調査中。ロケットの機体の本体の電子搭載機器からエンジンまでを隈なく見ていく必要がある。
・原因については今は検討がつかない。これが臭いな(怪しいな)という箇所は無い。
・機体はH2Aロケットとは別物。エンジンの電子搭載機器もH2Aと同じだが、部品構成や部品そのものが違う。
・第2段エンジンは実際に着火しなかったと考えている。着火していれば推力が出ているはず。
・本質的な原因については広い範囲から狭い範囲に狭めていきながら究明していく。
・2月17日の打ち上げ中止の原因が分かってきたので、今回(3月7日)の打ち上げを行っている。前回の中止の原因が分からなかったら今回の打ち上げは行わなかった。
・LE-9エンジンは本当に苦労した。約300秒で燃焼が停止したときは「よくやったな」という気持ちになった。
・H2ロケットの8号機の場合は海から引き上げてよかったが、今回は状況を見てロケットを引き上げるつもりはない。
・2号機の打ち上げについては焦ってはいけないため、今後の予定はまだ決められない。
・ロケットの打ち上げについては万全で望むが、結果について自信を持ってしまってはいけない。
・第2段エンジンについては民生品は使っておらず特注品が使われているという認識。
・フルモデルチェンジしたロケットであったが、途中までは本当に良く動作しているという印象。
・三菱重工のエンジニアの方々とは「一緒に乗り越えていきましょう」という気持ち。
・H3ロケットについては日本の未来がかかっているという認識。
・衛星を失ってしまって申し訳ない気持ち。
まとめ
今回のH3ロケットの打ち上げ失敗については日本国民としては大変残念な結果となりました。
一方、これまで時間をかけて開発を続けてきたLE-9ロケットの部分については問題なく動作しているようでした。
今回原因となった第2段エンジンが燃焼しなかった問題が解決できれば次(2号機)の打ち上げは期待できるのではないでしょうか。
今後のJAXAの原因究明、岡田匡史プロジェクトマネージャーの手腕に期待していきましょう!


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