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2019年  10月12日 B子さんの死とジュゴンへの脅威
  浦島悦子
B子さんの死と ジュゴンへの脅威
首里城が焼け落ちるというとんでもないことが起こって、みんなショックと悲しみを覚えています。

 「形あるものがなくなっても精神は滅びない」と言った人の言葉が心に染みました。早くも起こった再建への動きは困難を乗り越えて進むでしょう。

 10月12日版で沖縄タイムスが「ジュゴンは絶滅か?」と書いたのが1人歩きして、「沖縄のジュゴンは絶滅した」というフェイクが広がっているので危機感を持っています。県議会では、自民党は以前から、「どうせ絶滅するのだから、ジュゴンに関する予算をなくせ」と県に迫っているそうです。

 ここに掲載した文書は、「けーし風」104号にジュゴンに関する記事を書いたもので、ジュゴンは絶滅していないこと、しかし脅威にさらされていることを知ってほしくて書いたものです。
 今年三月十八日、今帰仁村運天漁港にジュゴンの死体が漂着した。沖縄防衛局が辺野古新基地建設に向けたアセス調査で確認しているA,B,C、三個体のうち、今帰仁村古宇利島周辺海域を主な生息域としていた雌のジュゴンB(Cの母親)だった。

 絶滅に瀕した沖縄のジュゴンの生息環境を守りたいと活動してきた私たち地元の市民グループは、国家権力が民意を押しつぶして強行している新基地建設の進行に伴って、親離れしたC(雌雄不明)が独自の餌場としていた辺野古・大浦湾海域から追い出され、大浦湾に隣接する嘉陽海域に二十年以上定住していたA(雄)も行方不明になる中で、繁殖の可能性を含め次世代への希望を繋いでいたB子さん(私たちは親しみを込めてそう呼んでいた)の死に大きなショックを受けた。

 沖縄防衛局が古宇利島周辺に設置した水中録音装置に、死体漂着四日前の十四日、ジュゴンの鳴音が「通常を大きく上回る頻度」で記録されていたことが判明した。B子さんの生息域は、本部半島から辺野古の埋め立て土砂を運ぶ運搬船の航路と重なるが、防衛局は早々に、新基地工事の作業船の影響はないと発表した。しかしその公開資料を見ると、民間船のAIS(船舶自動識別装置)は生データが表示されているが、土砂運搬船の航路は防衛局が作図したものであり、「影響はない」ことを裏付けるものではない。

 私たちが環境省・沖縄県・今帰仁村に対し、死因究明を求める要請を何度も出す中で、今帰仁村漁協の冷凍施設に四カ月も放置されていたB子さんの解剖が七月十七日、前記三者によって行われ、二九日付で解剖結果が報道発表された。沖縄近海に生息するオグロオトメエイの尾棘刺入に起因する死亡の可能性が最も高いという。多数の鋸歯状の突起を有する長さ約二三センチの尾棘が腸管を突き破り、腸の内容物が腹部全体に充満していたというから、B子さんの痛み・苦しみは想像を絶する。沖縄美ら島財団、鳥羽水族館、国立科学博物館の獣医師6名が携わったという解剖結果におそらく間違いはないと思われるが、しかし、これで「幕引き」させてはならない。

 直接の接触がなかったとしても土砂運搬船の頻繁な航行が海生生物の生態を攪乱し、通常ありえない事故が起こった可能性はある。今回の事故を遠因も含め究明すると同時に、AとCの行方、三頭以外にも少なくないジュゴンの目撃情報をもとに琉球諸島全域調査を環境省と沖縄県は早急に行ってほしい。

 そしてもう一つ、ジュゴンの脅威となっているのが、不発弾の海中爆破処理だ。沖縄戦の「置き土産」である不発弾は沿岸海域にも未だ多数残留している。海で見つかったものは海上自衛隊が爆破処理するのが通例だが、これによって沿岸域に住むジュゴンに直接影響するだけでなく、餌場である海草藻場を含め、沖縄の観光資源であるサンゴ礁生態系そのものを破壊してしまう。

 水中にある不発弾はダイナマイトを仕掛けて誘爆しない限り爆発しないため、放置または海溝のような深い場所に移動して「水畜」するのが国際的な常識だという。この常識を行政や市民に広く知らせ、海中爆破処理をなくしていきたい。

 沖縄沿岸域にジュゴンの生きられる環境を取り戻すことが、苦しんで亡くなったB子さんに報いる道だと痛感している。
(浦島悦子/チーム・ザン)
『けーし風』104号(2019年10月28日発行)掲載
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