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2008年  5月 2日 テーマ 米国で勝利した「沖縄ジュゴン訴訟」、那覇でシンポジウム
      浦島悦子
「沖縄ジュゴン訴訟」、那覇でシンポジウム
写真:サラ・バート弁護士(提供:鈴木雅子さん)
 4月20日、那覇市で沖縄ジュゴン「自然の権利」訴訟シンポジウム(環境法律家連盟ほか主催)が、同訴訟弁護団の一員である米国アース・ジャスティス所属のサラ・バート弁護士を迎えて開催された。


 米国カリフォルニア北部連邦裁判所(マリリン・ホール・パテロ裁判長)は今年1月24日(現地時間)、沖縄のジュゴンと地域住民及び日米の自然保護団体が米国防総省と国防長官を訴えていたジュゴン訴訟(2003年年提訴)で、原告勝訴の判決を下した。


 判決は、沖縄県名護市における米軍普天間飛行場代替施設(辺野古新基地)の建設は、他国の文化財(であるジュゴン)の保護をも義務づけた米国の国家歴史保存法に違反していると断じ、法の遵守を命じた。具体的には、被告の国防総省に対し、判決後90日以内に、同施設がジュゴンに及ぼす影響、およびその影響を回避・軽減する方法についての情報を示す文書、さらに、それらに責任を持つ担当者を明らかにする文書を裁判所に提出するよう命じた。原告に対しては、被告の文書提出後45日以内の応答(文書)を保証した。


 今回のシンポジウムは、国防総省側の文書提出期限である4月24日を前に、原告勝訴の意味を広く市民に伝え、原告・弁護団とそれを支える市民が今後どう訴訟に関わっていけるか、ジュゴン保護政策に国際基準を持ち込ませるためにはどんな行動が必要か、などを議論するために開かれたものだ。


日本の環境アセス法では米国家歴史保存法の水準を満たせない

 訴訟の意義と今後の展望について報告したバート弁護士は、「判事は原告団に、国防総省の提出する文書に対応するチャンスを与えた。国防総省は、日本政府だけでなく地元・沖縄からも情報を集める義務があり、集めた情報を法廷だけでなく地元に対しても提供しなければならない。そのうえで彼らは、新基地建設がジュゴンへの影響を避けて実現可能なものであるかどうかを決定しなければならない。それらに対して我々は意見を述べることができる。国防総省が国家歴史保存法の責務を果たすためには日本政府の環境アセス法では不十分だということ、ジュゴンが私たちにとって重要な文化財であることを、我々は法廷で説明できる」と語った。


 「しかし、国家歴史保存法にも弱点がある」と彼女は指摘した。この法律は、充分な情報の開示と協議など「正しい手続き」を求めるものであり、「正しい結果」を求めるものではない。そのため「基地建設を直接ストップさせることはできないが、しかし強力なツールにはなりうる。国防総省は強制的に地元の声を聞かなければならないので、私たちの考えを彼らの評価の中に組み入れさせることができるし、私たちは国防総省の貴重な情報を手に入れることができる」と強調した。

「辺野古アセスはアセスではない!」 桜井国俊・沖縄大学学長

 そのあと、アセス法の専門家である桜井国俊・沖縄大学学長が、「辺野古アセスはアセスではない!」と題して報告。もともと事業者側がやる「アワセメント」と揶揄される法の手続きさえ無視した方法書の大幅修正、海上自衛隊まで動員して強行した事前調査など、多くの問題点を指摘した。


 現在、日本政府が行っている普天間代替施設建設に向けたアセスを、島津康男・元アセス学会会長は「史上最悪のアセス」と酷評し、アセス学会では、こんなものがまかり通るなら日本のアセス法体系自体が崩壊するとの危機感を持っているという。このような日本のアセスの詳細が法廷で明らかになれば、それがジュゴンの保護を義務づけた米国家歴史保存法に合致するか否かは一目瞭然だろう。

今後の見通しについて

 国防総省に対する原告側反論の提出期限は6月9日。弁護団は、1月の判決を受けて日本政府が方法書の修正版を出さざるを得なかったなど、この訴訟が日本政府にとって大きなプレッシャーになっていることを評価しつつ、今後、ジュゴンへの悪影響に関する協議を、その協議対象を含め実質的なものにしていくこと、日本のアセスのでたらめさ、不当性を裁判で明らかにすること、地元での公聴会開催を含め、徹底した情報公開を追及していくと語った。


 バート弁護士によれば、米国地方裁判所の通例から判断すると、原告側の文書提出から約2ヶ月後の8〜9月頃、裁判所が次の決定を下す見通し。この訴訟は国家歴史保存法が国外に適用された初めての例であり、国防総省が直接沖縄に来て公聴会を開くことになれば画期的だ。弁護団は、裁判所がそれを決定する可能性は大きいと見ている。


 国家歴史保存法は、もともと米国先住民の文化や歴史財産を守るために作られた法律で、その後、世界遺産条約の締結に伴い、この条約を実現していくための国内法という性格が加わった。そのため市民の積極的な参加を保証・奨励している。このユニークな米国法を使って、地元沖縄の市民が、ジュゴンの生態や人との係わり、歴史的・文化的価値など、ジュゴンに関するさまざまな情報を集め、今後の訴訟やジュゴン保護に主体的に関わっていけるチャンスが与えられたとも言える。


当事者意識に欠ける米政府・国防総省

 国防総省は24日(現地時間)、裁判所に文書を提出したが、「沖縄タイムス」報道によれば、その中身は日本政府のアセス方法書の抜粋にすぎず、具体策は何も示さなかった。前出の桜井氏は「米国は基地建設とジュゴン保護に責任があると裁判で認定されたにもかかわらず、当事者意識がなく、あまりにもずさんだ」と批判している。このような国防総省の姿勢が、訴訟において彼らを有利にするとは思えない。原告側のきちんとした反論が、次の勝訴を導くだろう。

この文書はJanJanNewsに投稿・掲載されたものです。
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